地下一階の小宇宙〜店主（仮）と厄介な人達

【第1章】地下一階の宇宙

まるで巨大な霧吹きで吹いてるようなけぶった雨が、帰宅に急ぐ人々に吹き付けている。


視界の良くないガラス越しに眺めるその景色は、どんよりと灰色で、賑やかなはずの都会には色がない。


蒸し暑くて頼んだはずのアイスカフェラテは、効きすぎた冷房のおかげか、半分飲んだ所から氷が溶けて濁った水が増えていくばかりで進まない。


ーーー　ホットにすればよかったかな



夏が近付くと外の暑さで冷たいものを求めるが、店内の過剰な冷房で汗が冷えて、逆に凍える思いをする事をなぜ毎年忘れるのか、それを今年もまた思い出していた。


ーーーよし、今年は脳の学習機能を強化しよう…　ーーー


そう決意を新たにした所で携帯が新着メールを告げた。



ドキンとひとつ心臓が大きく鼓動して、内臓がキュッと緊張する。


ーーー　う〜〜　お願いします！　ーーー



果たして今まで携帯電話にこんなに祈った事があるだろうか。

震える指で受信トレイをタップした。