地下一階の小宇宙〜店主（仮）と厄介な人達

ガチャンっ！　カランカランカラ〜ン…



「　っ！　そうちゃんっ！！！」



ゼーゼーと息の荒い佳乃が、ドアにもたれるようにして現れた。


「…？　なんだお前、　コモドドラゴンに追いかけられたみたいな顔して」



息も絶え絶えでおでこに汗で髪の毛を張り付かせた佳乃を見て、一瞬ぽかんとしたが、すぐにいつもの人を小馬鹿にしたような表情を作って見せた。



「駅から徒歩圏内ってっ！　ハァっ　…言ったよね！！」



「徒歩圏内だろ」

「徒歩32分は徒歩圏内って言わないのっ！！」

「徒歩30分は徒歩圏内だろうよ。　
アンデスの子供たちなんか毎日二時間半かけて学校行ってんだぞ？」



ヨロヨロと倒れるようにして一番近い椅子にガタンと腰をおとしてテーブルに突っ伏した。


「なんだよ体力の無い若者だなぁ」



佳乃は目線だけをキッと上げて、創太郎を睨んだ。

タレ目がちなので全くもって迫力は無い



「　じゃあそうちゃんは32分！！　
雨の日も風の日も暑〜〜い日だって毎日歩けるのっ？」

「　あぁ、　歩けるね。　
必要とあらば歩いちゃうね俺は。」



息切れも落ち着いてきたので呼吸を整え背筋を伸ばす。



「　もういい、自転車買うから。　
経費で落としてね！」

　

「佳乃ちゃん…　自分の体力の無さに経費を使うんじゃないよ」



創太郎の言葉は無視して、佳乃は今日の帰りは絶対に自転車を買って帰ると、強く心に決めた。