地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
"カランカラ〜ン"
無音の狭い店内にドアが開く音が響いた。
「 …あれ… やってない…?」
現れたのはブレザーの学生服を着た、高校生くらいの男だった。
「…いらっ…しゃい…ませ?」
失礼ながら中高年ばかりしかこのお店で見て来なかったので、若い男子学生のお客さんが来るなんて、微塵も考えていなかった。
「いや、オーナーの人は?」
「そうちゃ… いや、オーナーは…今は居なくて…」
「は? なに、あんたあの人の女?」
「はっ!? 違いますっ!!」
突然そんな事を言われて声が3オクターブくらい裏返った。
「ふーん… 狙ってるだけか」
ーーー 小声で呟いても聞こえてるっ!
「だから違うって言ってるじゃないですか!
そんな事有り得ないし、有り得たくも無いし、そもそも私はただの姪ですっ!!」
普段はこの位流せる佳乃だし、むしろめったに声を荒げたりはしないが、いかんせん今はタイミングが悪い。
そして内容も悪い。
「何ムキになってんの。
どうでもいいけど、、これ注文されてたコーヒー豆。
あのオーナーに渡せばわかるから。」
その男子学生は気だるそうにカウンターまで近付いて、紙袋をポンとカウンターに置いた。
「 …ません…」
「は?」
「あの人はもういませんっ!
私が今日から突然一人でここを切り盛りして行かなきゃいけないんです!」
心が折れかけていた所に、見ず知らずのすごく年下の学生に、なぜこんな心無い、しかも創太郎の女とか、まさかの佳乃が創太郎を狙ってるとか、そんな大的外れの素っ頓狂な事を言われて、佳乃の崩れかけていた我慢の決壊は一部崩壊した。