地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
【第5章】それぞれの荷物
ーーー梅雨っていつまでだっけな…
"第2コンピューター準備室"
二人がけソファーに寝転んで、はみ出した脚を持て余した海星が、ふと重そうな雲を見た。
7月も前半ならこんなものだったか。
ここは最近お気に入りのサボりスポットだ。
今朝は学校まで来たのは良いものの、一年女子の海星見物ツアー御一行による圧力で、すっかり教室の机に座る気力が失せた。
ーーー帰っかな…
今日は放課後行かなければいけない所があるが、早めに行くとあからさまに心配そうな顔をするだろう。
それはなんとなく気まずい。
昼に生徒が教室から溢れ出してくる前に、裏門から外に出る。
適当に昼を食べて家に帰った。
誰も出迎えない事がもう当たり前なので何とも思わないし気楽でさえある。
部屋に行く途中、ふと生活感のないリビングを見ると、食卓の上に小さめのボストンバッグがそこだけ主張しているように置かれていた。
そっと中を確認すると、タオルやら服やらが几帳面に小さく畳んで詰められている。
ーーーここまでやるなら自分で行けよ…
開けたファスナーもそのままにとりあえず部屋へ向かった。