地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
「 …まじかよ 」
やっぱりと言うべきか、よしのが重みで破れた紙袋から散乱した、りんごやらみかんやら缶詰の様な物に囲まれて、あたふたと転がるものを拾おうとしている姿があった。
「 あいつマジありえねぇ… 」
ため息と共に言葉がこぼれる。
よしのは自分のトートバッグに拾っては入れ、拾っては入れしているが、あきらかにパンパンで間に合わなそうだ。
「 おい 」
反対車線側からマウンテンバイクに跨がったまま声をかける。
「 えっ? 」
屈んでくるくると方向転換しながら落ちた物を追いかけている佳乃は、すぐにはその声がどこから掛けられているのかわからない様だ。
前かがみでりんごを手に持ちながらキョロキョロしている姿が滑稽で、海星が少し笑みを含んだ。
「 おい! 」
ハンドルに体を預けながら、さっきより大きな声で呼ぶと、流石に気付いたのかその変な体勢のまま海星を見た。
「っぶはっ!」
「え?」
「 ゴリラかよ 」
「 は?!」
自分の体勢に気づいて、バッと気を付けの姿勢に直した。
「 ゴリっ… いや、あの…
さっきはありがとう。 助かりました…」
お礼が先だと思うが、ゴリラに関しても物申したい様で、中途半端にお辞儀が斜めだ。
「 そっち… また転がり始めた 」
「うそっ! やっ! ちょっと!」
焦って動いた靴の先が、
足元に置いたパンパンのトートバッグに当たって、傾いたバッグの口から、
りんごがまたころころといくつか転がり始めている。
呆れて自転車から降り、車道の方に転がってきたりんごを拾った。
「でかい荷物置いたのに、更に重そうな物 持って帰ってきてんじゃねぇよ」
「病院についたら家族と間違われちゃって、そのさんの荷物を渡されたから、旦那さんの病室まで運んだんだけど、
お礼にって、これ… 」
トートバッグに入り切らない、両手の中のいくつかの果物を見つめた。