地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
「 はい、どうぞ。 」
コトンと置かれた皿から、食欲を誘う香りが立ち昇る。
「荷物を持ってくれた感謝の気持ちを、この一皿に込めてみました 」
おどけた様にずいっと料理を勧める。
海星は素直にフォークを手に取った。
「 …美味い…」
「っえ? なに? うまい?! うそ!
やった〜!!
なんかすごく達成感! 」
子供のようにバンザイして喜ぶ姿に、
少ししんみりした空気は一瞬でぶった切られた。
「 毎日は食えないけど 」
「これから少しず〜つメニュー増やすの!」
佳乃が手に持っていたトングをビッと立てて反論する。
「 ま、せいぜい客減らないレベルの食いもん作れよ。」
「そんなの出さないよ!
研究に研究を重ねるんだから!」
「メニュー増えんのに何年かかんだよ」
「ムッキー! 口の減らない〜〜!」
何を言っても口では勝てない佳乃がカウンターを"バババン"と手のひらで叩いた。
「 ま、新しいの出来たら味見してやるよ。
ご馳走さん 」
そう言って綺麗に完食したお皿を残して席を立った。
「あ、そういえば君、名前は?」
足が長いので、カウンターからドアまで3歩程で着いてしまう。
すでにその体の半分はドアの外だ。
「 カイセイ 」
それだけ言って、すぐにドアはパタンと閉められた。