地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
【第7章】悩める客と秘密の相談
「 やっぱ佳乃ちゃんのたらこスパゲッティはうまいな〜〜!」
"金曜日の常連さん" から、"ほぼ毎日くる常連さん"になった、たけさんが、今日もカウンターのいつもの席で、たらこスパゲティを頬張っている。
たけさんはもう4日間、ランチはたらこスパゲティだ。
流石に気の毒なので、佳乃は超特急で2品目の研究に勤しんでいる。
初日と、一日空けて昨日のランチタイムに来てくれたゴローさんは賢明だと思う。
既に一昨日の閉店後から新たなメニューの試作をしているのだが、なかなか自分の中でGOサインが出せない。
もうちょっと妥協できる性格なら話は速いのかもしれないが、これはもう昔から変わらない性分なのだ。
アンカサを切り盛りするようになってから、忙しくてお誘いを断ってばかりの親友からは、
"日本最大級のレシピサイト"
〈クッキンパット〉見ろ とアドバイスされたので、今はもっぱらお世話になっている。
時刻は夕方5時45分。
このままお客さんが来なければ、6時には店を閉めようかという頃。
"カランカラ〜ン".
「 あら?
今日は配達… じゃないよね?」
制服姿のままの海星が、一直線に3歩でカウンターまで到着し腰掛けた。
「 お前が呼んだんだろ 」
「そろそろお腹がすく頃かなーと思って?」
昨夜、試作で遅くなった帰り道の商店街で、ちょうどシャッターを閉めている珈琲豆専門店
《アステル》のオーナー、" こうじさん"に会ったのだ。
その人こそが海星の父親だ。
かいせいはバイトか息子かどちらだろう、と思っていた謎は解けた。
「お前親父に余計なこと言うなよ」
「ただメニューの試作の話と、最近配達は若い人ですね〜って話しただけよ」
「 これ。 親父から」
小さな紙袋をポスンとカウンターに出した。
「 なぁに? 」
「試供品だと。 」
開けてみると、黒い珈琲豆の真空パックと、
『アラビカ フェアトレード スマトラ産』
と、手書きで書いた小さなメモ紙が入っていた。
この店で最初に創太郎に聞かされた話を思い出して、まだ一ヶ月も経ってない最近の話なのに、なんだか懐かしい気持ちになってジンと来てしまった。
「 嬉しい! 今日はこれをいただこう!
ちょっと待って、すぐ淹れるから。」
ゴリゴリとミルで挽くと、独特の甘い香りが広がった。
その香りだけでうっとりしていると、
カランカラ〜ンと、またドアが開く音が響いた。
"金曜日の常連さん" から、"ほぼ毎日くる常連さん"になった、たけさんが、今日もカウンターのいつもの席で、たらこスパゲティを頬張っている。
たけさんはもう4日間、ランチはたらこスパゲティだ。
流石に気の毒なので、佳乃は超特急で2品目の研究に勤しんでいる。
初日と、一日空けて昨日のランチタイムに来てくれたゴローさんは賢明だと思う。
既に一昨日の閉店後から新たなメニューの試作をしているのだが、なかなか自分の中でGOサインが出せない。
もうちょっと妥協できる性格なら話は速いのかもしれないが、これはもう昔から変わらない性分なのだ。
アンカサを切り盛りするようになってから、忙しくてお誘いを断ってばかりの親友からは、
"日本最大級のレシピサイト"
〈クッキンパット〉見ろ とアドバイスされたので、今はもっぱらお世話になっている。
時刻は夕方5時45分。
このままお客さんが来なければ、6時には店を閉めようかという頃。
"カランカラ〜ン".
「 あら?
今日は配達… じゃないよね?」
制服姿のままの海星が、一直線に3歩でカウンターまで到着し腰掛けた。
「 お前が呼んだんだろ 」
「そろそろお腹がすく頃かなーと思って?」
昨夜、試作で遅くなった帰り道の商店街で、ちょうどシャッターを閉めている珈琲豆専門店
《アステル》のオーナー、" こうじさん"に会ったのだ。
その人こそが海星の父親だ。
かいせいはバイトか息子かどちらだろう、と思っていた謎は解けた。
「お前親父に余計なこと言うなよ」
「ただメニューの試作の話と、最近配達は若い人ですね〜って話しただけよ」
「 これ。 親父から」
小さな紙袋をポスンとカウンターに出した。
「 なぁに? 」
「試供品だと。 」
開けてみると、黒い珈琲豆の真空パックと、
『アラビカ フェアトレード スマトラ産』
と、手書きで書いた小さなメモ紙が入っていた。
この店で最初に創太郎に聞かされた話を思い出して、まだ一ヶ月も経ってない最近の話なのに、なんだか懐かしい気持ちになってジンと来てしまった。
「 嬉しい! 今日はこれをいただこう!
ちょっと待って、すぐ淹れるから。」
ゴリゴリとミルで挽くと、独特の甘い香りが広がった。
その香りだけでうっとりしていると、
カランカラ〜ンと、またドアが開く音が響いた。