地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
エレナが発する言葉は、まだ高校生とは思えないほど何か説得力があり、おまけに悲壮感さえ感じる。
そういう物に滅法弱いと自覚している佳乃は、心の中でひとつ踏ん張りを効かせて、感情に流されない様に小さく気合を入れた。
「あのね。 お母さんがあなた越しに夢を追ってると言うけど、あなたもオリンピックを目指してるんじゃないの?
だとしたら、同じ夢を追える最高のパートナーじゃない?」
佳乃なりにまともな事を言ったつもりだが、とたんにエレナの目に、キッと力が入った。
「もちろん私も目指してますよ、オリンピック。
でも、家族ってそれだけですか?!
体操以外にも私の生活はあります。
それはまるで無視されてきました。
興味無いんですよ、私の体操以外には。
今回だって何があったのか知らないけど、
きっと体操に何か関係してるんでしょ?!
じゃなきゃお母さんが学校まで覗きに来たりしないもの!」
ーーーぐぬぬ…
正論すぎてぐうの音も出ないとはこの事である。
佳乃が冷えた手をおでこに当てて、どうしたものかと考えあぐねていると、エレナのかばんの中から電子音が聞こえてきた。
「 … 」
カバンからスマホを出してその音を止める。
アラームのようだ。
「 …もう行かなきゃ…
ここに来たことは言いません。
でも私はこのまま諦めません。
いい加減…はっきりさせたい…
…おじゃましました。」
そう言うと、さっと荷物を肩に背負って椅子から降りた。
最後まで麦茶には手をつけなかった。
そういう物に滅法弱いと自覚している佳乃は、心の中でひとつ踏ん張りを効かせて、感情に流されない様に小さく気合を入れた。
「あのね。 お母さんがあなた越しに夢を追ってると言うけど、あなたもオリンピックを目指してるんじゃないの?
だとしたら、同じ夢を追える最高のパートナーじゃない?」
佳乃なりにまともな事を言ったつもりだが、とたんにエレナの目に、キッと力が入った。
「もちろん私も目指してますよ、オリンピック。
でも、家族ってそれだけですか?!
体操以外にも私の生活はあります。
それはまるで無視されてきました。
興味無いんですよ、私の体操以外には。
今回だって何があったのか知らないけど、
きっと体操に何か関係してるんでしょ?!
じゃなきゃお母さんが学校まで覗きに来たりしないもの!」
ーーーぐぬぬ…
正論すぎてぐうの音も出ないとはこの事である。
佳乃が冷えた手をおでこに当てて、どうしたものかと考えあぐねていると、エレナのかばんの中から電子音が聞こえてきた。
「 … 」
カバンからスマホを出してその音を止める。
アラームのようだ。
「 …もう行かなきゃ…
ここに来たことは言いません。
でも私はこのまま諦めません。
いい加減…はっきりさせたい…
…おじゃましました。」
そう言うと、さっと荷物を肩に背負って椅子から降りた。
最後まで麦茶には手をつけなかった。