地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
初彼氏が出来たと言っても何をする訳でもない。
ただなんとなく目が合ったり、部活の帰りに時間が会えば、間に大人が一人入りそうな距離を空けて、微妙な空気の中15分程の帰り道を歩くだけだ。
この関係の一番多くの時間を占めるのは、周りから冷やかされたり、相手の事を根掘り葉掘り詮索される事であり、初カレについて知ってる事と言えば、直接本人同士の間で分かり合えた事ではなく、噂や、" そうらしい " という曖昧な第三者からもたらされる情報が殆どだった。
そんな付き合いが正解かどうか考えられる経験もなく、ただ月日が1週間、2週間と過ぎて行った。
内容も特に無い交際期間がもうすぐ一月を迎える頃、それは突然告げられた。
『 他に好きな人が出来た 』
付き合ったからって、特に相手との距離が特段近くなったわけでも無かったので、危機感も不安も特に感じていなかった。
ただ私にとっては唐突であり、予想もしていなかったので、
" …は…、 はぁ…。 "
としか言えなかった。
なんとも間抜けな幕切れであり、特に悲しくはならなかったが、明日からどんな生活になるんだろう…?、と、ただ漠然と自分の学校生活に不安が込み上げてきた。
翌日からは、付き合った時と同じ位の賑わい振りだった。
だがしかしその騒ぎは当の本人の私をサッと撫でただけで通り過ぎ、話題は既に"元カレ"と、"新しい好きな人" で持ち切りだった。
なぜこんなに速く皆知っているのか、集団の情報力に呆気にとられた。
お昼休みは久しぶりにアミと二人で食べた。
私が振られたことで憐れに思ったか、周りのミーハーな女子達が減ったからかわからないが、アミの方から誘ってきた。
今日からポッカリと穴が空いたような生活を送るのかと、内心不安に思っていたので、正直嬉しかった。
だが、そんな昼休みも中盤に差し掛かった頃、そのニュースはミーハーな男子と女子数名により盛大にもたらされた。
『新しい好きなヤツは、"ソノダ アミ" だって!!!』
走ってきたのか、大きな音を立てて開かれた教室のドアと、そのニュースに皆が注目し大いに盛り上がった。
だが私は見たのだ。
そう宣言された時、アミの口元がにやりと歪む所を。