地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
その日は本当に一日最悪だった。
アミはしきりに
"信じられない"
とか、
"私はエレナの親友なのに"
とか、
"エレナと一ヶ月も付き合ってないのに、いつから私の事好きだったんだろう"
などと言って歩いた。
アミだけを取囲めばいいのに、なぜかアミに腕をがっちり組まれた、一応"モトカノ"である私も一緒に囲まれ、針のむしろの様な気分だった。
普段は腕なんて組まないのに、今思えば突如 "人気者の好きな人" という地位に上り詰めた自分を私に見せつけて優越感を得たかったのだろう。
その後、本人から改めて直接告白されたらしいが、アミ曰く、
『もちろん断った』
らしい。
私の親友なのに、
『いくらなんでも付き合えない』
ようだ。
それを期にアミは、"親友思いの優しい子" という地位を確立し、ただ振られただけの私は、
"別れたのに親友に元カレを譲ってあげない心の狭い奴"
と言う地位に降格した。
それからは今まで以上に新体操に没頭した。
大会では一位を取り、新体操で有名な強豪校、北麗女子高校への推薦入学も決まった。
今の家からも電車一本で行ける立地の良い場所でもある。
これでやっと静かに生活出来ると思ったら、なんとアミが北麗女子を受験すると言う。
アミの新体操の成績は、全国中学生の、中の上くらいだったので、北麗女子からしてもアミが入るのは歓迎だろう。
きつい見た目の割に私は、はっきりと不満を言えない質だ。
表向きは仲良くしてくるアミを突き放すことはできなかった。
高校入学に向けて、アミは新体操にかなり力を入れていった。
北女の新体操部に入部するまでに、全国一位の私との差を縮めたかったのだろうと思う。
学費はそこそこ高いが、偏差値は中程度の北女に難無く合格したアミとの学校生活がまた始まったのだ。