地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
幸いクラスは離れて、新体操部でも世界を目指すような生徒の指導をしている事もあり、一年の私達には無駄話をしたり余計なことに構ってる暇は無かった。



朝は早く帰りは遅い。


その他に体操クラブもある。

アミとは部室で短い話をするくらいの関係になった。



可愛らしくて明るく愛想の良いアミには、どんどん新しい友達が出来ている様で、先輩もアミの事を可愛がっていた。



更衣室では新しい友達や先輩達と、
隣の高校にすごいイケメンがいる等といつも盛り上がっていて、私との短い会話も自然と無くなっていった。





ある意味平和な日常を送っていたが、一年生の後半、私にとって大きな出来事が起きた。




新体操部のコーチの一人である教師に、特別な感情を抱いてしまったのだ。



部の中でも、私はオリンピックを目指す特別強化選手であり、他の部員とは違うメニューをこなす事もしばしばあった。


私の担当となっていた41歳の教師で、年齢より見た目は若々しく、イケメンでは無いが清潔感もあり人望もある教師だ。



毎日必死に体操に取り組んでいく中で、こんなに近く、そして親身であり、尚かつユーモアもある大人の男性と出会ったのは初めてで、演技を一緒に考えたり、将来の事を話したりしている中で、自然と気持ちが動いていった。


体育教員でもある

"本間先生"

に会いに行くのは割と簡単で、昼休みなどの空いた時間には、体育準備室の本間先生の個室に行けばいい。


元々友達の居ない私がどこへ行こうと、特に気にする人もいなかった。


何かと理由を付けて、何度か通っている内に次第に座る距離が縮まって行った。


初めて隣に座った日に、初めてのキスをした。


勿論ファーストキスだし、何秒か触れるだけの軽い物だけど、私は自分でも分かるくらい真っ赤になってしまって涙まで溢れてしまった。


先生は誤ってきたけど、嫌なんじゃなくて嬉しいと告げると抱きしめてくれた。


男の人に抱き締められたのは初めてで、あの幸福感は忘れられない。


大変な事を思い出してハッと我に返った。


防犯カメラだ。


女子校だからか、各教員の部屋にはカメラが取り付けられている。


こんな所を見られたらどうなるか、想像するのも恐ろしかったが、先生は私の背中をトントンとあやしながら、



『心配無いよ。 この部屋のカメラは機能してないから』



と言った。

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