地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
それから私の生活は以前と同じ、新体操と、新体操の事には口うるさい母と、学校でただ授業を受ける日々に戻った。


友達もいないし、会いに行く人もいない。


違うのは、前と同じ生活なのに、前より何もかもがつまらなくなった事だ。



部活が終わり、無駄話をする相手も居場所も無い部室から、いつものように一番先に出た。



校門まであと半分くらいの所で、忘れ物に気づき部室へ戻った。

部室の小さくあいた窓から声が聞こえる。


その内容に、さすがに足を止めざるを得なかった。



『だけど実際あんな事してる人には見えないよね、マスモトさん 』

『だよね! 存在感ないしさ! 演技の時以外は!』


『演技はマジで凄いと思うけどー、巻き込まれたくないわー』


『アミが頼み込むから普通にしてるけど、バレたらうちらもやばいじゃんね、関係無いのにさ』



アミの名前に一瞬胃のあたりがザワついた。




『あんなヤバそうな奴らと実はつるんでるとか、ほんと人間ってわかんない』


『中学の頃からでしょ? 

 アミが止めても聞かなかったらしいじゃん。

昔初カレにこっぴどく振られてグレたらしいよ。

しかもソイツがアミの事好きになっちゃったらしくてさ。

それでアミが責任感じてるって。

だからどうしても新体操だけは続けさせてあげたいって…』


『マジでー? アミ何も悪くないじゃん!
アミがかわいそすぎるよ 』




一体何の話だ…!?


これは自分の事なのか。


所々は事実だが、殆どは全く意味がわからない。


私がグレた?!

アミが責任を感じてる?!

私が何をした?!


世間話の一つもする相手がいないのに、どうして誰かとつるんでいると言う話がでるのか?!



晴天の霹靂と言うのか何というの分からないが、とにかくショックが大きすぎて窓の下の壁に寄りかかってしゃがんだまま、動けなかった。



私の知らない "ワタシ" が、みんなの中では確かに存在しているのだ

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