悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!
そう思いながら、恐る恐るトーマ様の隣に座った。
「レティはいい子だね。こんなレティがもうすぐ……」
トーマ様は持っていたカップをテーブルに戻すと、わたくしの髪の毛先をクルクルといじり出した。
あれ?カップは?私は紅茶を浴びせられるのではなかったのだろうか……。
何度見ても、紅茶はカップに収まってテーブルの上に乗っている。
そして、この指遊びは何!?
ひとつまみの毛先をクルクルいじっているトーマ様。
わたくしはカチンと全身が硬直した。
この甘い雰囲気は、一体なんなのでしょうか――。
たぶん、いやきっとトーマ様はいやいややっているに違いない。
溺愛している振りをしているだけで、見せかけなのだろう。断罪前の最後の情けなのかもしれない。
だってわたくしは、リオの記憶の物語通りに、今まで行動してきたのだから。
――3日後にトーマ様から断罪されるのは明確だ。