悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!
会場の扉を守っている騎士がそう中に呼びかけると、会場に居た全員がわたくしに視線を向けた。
その視線全てが、わたくしを祝っているのだと思うと嬉しいく感じる。
凛と正面を向き、わたくしは1番奥の祭壇に居るトーマ様の元へ優雅に歩きだす。
もちろん、周りにいた人達はサッと私の通る道を作る。そのため、一直線に向かうことが出来た。
祭壇の上にはトーマ様と、トーマ様のお父上であるこの国の国王様が居る。
わたくしは祭壇のひとつ手前でカーテシーをした。
「国王様、トーマ様、本日はわたくしの祝いのための席を設けて下さりありがとうございます」
本来なら、直ぐに「楽にせよ」と言われ、話ができるのだが、なぜかおふたりとも反応して下さらない。どうして……?
わたくしはいけない事だと思いながらも、恐る恐る祭壇の上のおふたりを見上げた。
「――っ」
その顔を見て、思わず息を飲む。突き刺さるような冷たい視線だ。