悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!
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そして、つい最近――1週間前の出来事。
トーマ様から王宮に呼ばれた時、わたくしはトーマ様とサラ様がふたりで居る所を目撃してしまった。
サラ様の身分で王宮に入れる事なんて滅多に無いのは分かっている。
だけどここに、トーマ様といるという事は彼女はトーマ様に呼ばれたのだろう。
仲が良さそうに笑って話しているふたりを見て、わたくしは胸がモヤモヤした。
もうすぐわたくしは断罪される身――。
ヒロインであるサラ様とトーマ様が一緒にいるなんて当たり前のことだ。
上手く物語通りに進んでいる証拠。
だけどわたくしは、考える前に身体が勝手にふたりの前に進んでいた。
このまま見ないふりをして、通り過ぎれば良かったのに……。
そう思ってももう遅い。トーマ様もサラ様もわたくしが近づいてきた事に気がついて目が合った。
「サラ様、トーマ様はわたくしの婚約者です。なのにふたりっきりになるとは無礼ではなくて?」