悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!
考え事をしていたら、トーマ様の呼ぶ声に反応できなかったらしい。心配顔が覗き込まれている。
そして、あろうことかトーマ様の手がわたくしの頬に触れている。
――っ!
その事に気づいた途端、わたくしの顔は一気に熱を帯びる。
「顔が真っ赤だよ?無理してない?……パーティーの準備で疲れてしまったのかな?」
「だ、だ、大丈夫ですわ」
これはトーマ様の演技……。
本気にしてはダメよレティシア、落ち着きなさい。そう自分に言い聞かせる。
なのに、トーマ様はわたくしを離そうとしてくれなかった。
「少し休んだ方がいい」
そう言って、わたくしの隣に座り直した。
広いソファだけど、対面で座っていたわたくし
達。なのにあっという間にトーマ様は隣に来た。
そして、わたくしは抵抗する間もなく、視界が右に90度傾いた。部屋が横に見えるわ……。
じゃなくてっ!
「……トーマ様?」
右耳の下には、少ししっかりしたトーマ様の膝がある。