悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!
起き上がろうにも、トーマ様の手はわたくしの頭を撫でていて、もう片方の手はわたくしの身体を支えている。
――この状況って……っ。
「レティは頑張りすぎるところがあるからね、少しくらい休まないと」
ひざまくら!?
トーマ様の言葉が耳に入ってこないくらい、自分の心臓の音がうるさい。
ドキドキなんてもんじゃない。バクバクしている。
これは……わたくしへの最後のご褒美と受け取っても良いのでしょうか?
緊張と心臓の音で声を出すことが出来ないまま、わたくしはされるがままになっていた。
「私の足でごめんね。痛くない?」
「い、痛くなんて……」
むしろ丁度いい。
「我慢せず、痛かったら言うんだよ」
そう言いながら、ずっとわたくしの頭を撫でているトーマ様。
相変わらずバクバクしているわたくしの心臓の音は、トーマ様にバレていないだろうか。
1ミリも頭を動かすことが出来ないので、トーマ様の表情が分からない。