悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!
さっきまで普通にお茶をして、ドレスの話をしていたはずなのに、どうしてこんな展開になったのだろう。
こんな事、リオの記憶の物語では無い。
冷たい視線で見られることはあっても、こんな甘い展開になるなんて無かったはずだ。
ヒロインがサラ様のお話だから、トーマ様がわたくしとふたりの時に何をしているのかまでは書いていなかった。
でも、冷たい視線を向ける相手にこんなことをする人がいるだろうか。
「あ、の……トーマ様」
「ん?」
もう、なんですかっ……今の“ん?”って冷たいどころか、めちゃくちゃ甘い声じゃないですか。
「もう大丈夫です。ですから……」
これ以上は心臓がもたない。
「ほんと?顔見せて?」
拘束されていた身体が解かれ、今度はゆっくりと起き上がらせてもらう。
最後まで支えてくれるなんて、トーマ様は優しすぎる。
だけどわたくしは、次の試練に向けて心を無にする事にした。