悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!
それに、たくさんの人に見られている中で、「冒険者になりたいからお断りします」なんて言える訳が無い。
もともと、断罪されるなら冒険者に――って思ったのだ。
婚約破棄されず、国外追放もないなら冒険者になる必要が無い。
大好きなトーマ様の近くに居られるのなら……。
この時のわたくしは、自分が悪役令嬢だということなどすでに頭の中になかった。
「いいえ、トーマ様。不安なんてありませんわ」
そうトーマ様にだけ聞こえるように返事をしたあと、わたくしは少し大きな声を出すため、大きく息を吸った。
「喜んでお受け致します」
その瞬間、ほっとしたようなトーマ様の顔と、嬉しそうな表情の国王様と王妃様が見えた。
わたくしの返事を聞いた会場内もわぁーっと盛り上がっている。
貴族たちの中で1番前に居たお父様とお母様も安心したような表情をしている。
これで、よかったんだ……。