ルージュに託したアマリリス
1人シャンパンを飲みながら、参列者を観察している私の元へ、トイレへと席を立っていたはずの友人が戻ってくる。
花が咲いたようにふわりとまとめられたアップスタイル。女性らしいAラインのシルエット。カメリア色をしたパーティドレスが、よく似合う彼女。
「私はいいよ。結愛(ゆあ)は楽しんでおいで」
仕事は同じ化粧部員。同じブランド。
同じ専門学校。同じ高校だったのに、髪はサイドに流して、モノトーンスタイルに、深みのある赤いルージュをさした私とは、似ても似つかない。
それでもこうして仲良くやっていて、結愛も、百合のことも、2人といる時間のことも、変わらず好きだと思うんだから、人との縁や繋がりは、なんだか不思議なものだ。
「えー、高年収でスマートで、顔も身長もそこそこだとしても?結婚相手によくない?今付き合って来年辺り結婚すれば、30までには子ども生めるよ?」
「だとしても。私はまだ結婚する気もないし。
せっかくなんだから全員結愛の候補にしちゃいなよ。中身もしっくりくる人をさ」
本日の主役である百合はもちろん、結愛にも。
大切な2人には、地球上でイチバン幸せでいてほしいと願う。
2人とも、イチバンに。とは、思いっきり矛盾をしてるけど、そんなことは構わない。
数分前にも、結婚式の場で人生のパートナーを探すなんて。と思っていたけど、彼女が幸せを掴めるのであればなんだっていい。ぜひ、結愛の愛らしい魅了を最大限に発揮してほしいと期待をする。
なんて、身内に甘いのは重々承知だ。
「私ひとりで?全員?」
「大丈夫。結愛ならいける。
婿、探すんでしょ?」
「タイムリミット、迫ってるもん。
んー。凛香も、気が向いたらくるんだよ?」
アイコンタクトで『ほんとにいかない?』と再確認してくる結愛に、にっこり笑って、気が向くことはないかな、とは返さなかった。
タイムリミットなんてものは、子づくり以外のことではきっとないよ、とも。