噛み痕にキス
あたしの生きる希望だった。
CDを買ったり、ライブに行ったり、グッズを集めたり。それをする為に働いていたと言っても良い。
いや、それに生きることは附随していた。
どうして、なんで。
悲しみと怒りの波の後に残ったのは、大きな穴だった。
何をしても満たされない、きっと。
「伊丹、まだ残ってたのか」
最後に残っていた同僚が帰った後、あたしは一人、フロアに残ってキーボードを叩いていた。
そこへ現れたのは同期、井花。
「うん、引き継ぎとか色々」
声だけで分かり、視線を動かすことはしなかった。感じが悪いだろうけれど、井花もあたしに対して同じ対応をする。