噛み痕にキス

今あたしが担当している仕事は、他の同僚たちに割り振られる。
負担は増えるだろうが、辞める人間には一切関係ない。でもまあ、それに関する苦情は受ける覚悟でいる。

井花からも。

「辞めてどうすんの? 実家帰んの?」
「んーまだ決めてない」

誤字はない。ちら、と時計をみればタイムリミットが迫ってきている。

昨日も見回りの人に追い出された。連日ともなると色々言われるかもしれない。

「やりたいこととかねーの?」

やりたいこと、と頭の中で言葉がひっかかる。

聖地巡礼はもうした。
CDも余すことなく聴いた。
ライブ映像だって。

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