噛み痕にキス
井花が何も言わないので、再度隣に目を向ければ、頭上に落ちた手刀。
「いったい!」
「馬鹿かお前は。もっと大事にしろ」
「父親か……」
「言いたくもなるわ」
「冗談冗談。ごめんね。そういうのはちゃんとプロに頼みます」
PCの電源を落とし、ぱたんと閉じる。
引き出しにしまって鍵をかけた。
「は? プロ?」
「うん、ほらあるじゃん。女性用のも」
「え、お前なんか飲んだ? 酔ってる?」
肩を掴まれ、井花の方を向かされる。戸惑った顔をしているのが見えた。少し可愛いなとは思う。
可愛いなんて思われても嬉しくはないか、うん。