同期に恋してしまったら~友達からはじまる恋ってありますか?~
向坂の言葉につられて、駅に向かって一緒に歩いていてふと思った。

「あれ?あんた、あっちじゃないの?駅。」

長身の向坂を横から見上げる。
わたしの身長だと横に並んだ時に見上げる男性は結構少ない。
向坂はかなり長身なのだ。

「え?こっちだけど。」

向坂がキョトンとしている。

「だって、マンションあっちでしょ?」

「関西から帰ってきて前とおんなじ部屋とは限らねーだろ?」

あ、そうか…。

「どこなの?マンション。」

「んー。お前とおんなじ駅。お前が引っ越してなかったらな。」

「え?マジで?引っ越してない。」

ちょっとそれ…嬉しすぎ。
顔に出てませんように…

「なんだよ。嫌なのかよ?」

向坂が拗ねて横を向いた。

「いや…んなことない…けどね。」

思わず下向いてしまった…
じゃあ…こんなとき一緒に帰れる…。
嬉しくて死にそう。

「大学のときの友達の不動産関係のやつに頼んだんだよ。じゃあ俺の条件にあってんのがそこしかなかったんだよ。」

「うん…」

ちょっと言葉少なになってしまった。

そのまま電車に乗るけど、10時近くになっていたので、車輌の中にはほとんど人もいなくてゆったり座れた。

「ところで、明日同期で約束なんてしてたっけ?」

「してるわけねーだろ?もうこれ以上なんかあったら俺…死ぬわ。」

「え?」

「ここ一週間毎日誰かが歓迎会と称しては俺を誘うもんだから何も休めてねー。
だから明日のことはテキトーなウソだよ。南部課長もわかってくれたんじゃねー?」

「マジで?うわっきっつ…。」

「だろ?」

「明日はゆっくりしなよ。」

「うん…そだな。」


< 16 / 183 >

この作品をシェア

pagetop