同期に恋してしまったら~友達からはじまる恋ってありますか?~
「わたし帰るけど…大丈夫?奈桜。」

裕理が心配そうにわたしを見る。

「わかんない…もう…どうでもいいかも?」

わたしもかなり投げやりになっていた。

「奈桜んとこ泊まってあげたいけど…明日彼の実家に挨拶行くことになってて…ほんとゴメン!」

裕理が手を合わせている。

「けど…ほんっと心配…」

「大丈夫だよ。わたしだって大人なんだから…これくらい…」

そう…これくらい…何でもないし…。

無理な笑顔を作ると裕理に手を振り、二次会場をあとにした。

ちょうどつかまったタクシーに乗ると、急に繁華街のざわめきが途絶え、静かな空間で無機質なタクシー運転手さんの

「どちらまで?」

という声になんだか悲しくなってきた。

タクシー運転手さんにマンションの住所を伝えたわたしは、窓の外を眺めてて…
そしたらなんだか泣けてきて…
自分が馬鹿みたいに思えてきて…

けど、それでもやっぱり…

アラサーのわたしはこんなとこで泣くわけにいかなくて…
耐えて耐えて…

そしたらタクシーが着いて…
涙を堪えて料金を支払うとタクシーから降りた。


そして…そこでわたしは…

わたしのマンションの前にスラっと背の高いよく知ってる影を見つけて…

もう我慢できなくなって…

「ウソ…」

と言ったまま…

涙が止まらなくなった。


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