同期に恋してしまったら~友達からはじまる恋ってありますか?~


「おい…どうしたんだよ?」

わたしの涙に驚いて、その影は、慌ててわたしのところまで走ってくると、わたしの右手をとった。

あ、向坂の…手。

手が触れただけなのに…わたしの体が幸せで満たされる。

そして、そのあふれる感情に涙がまたとめどなく溢れてきて、向坂はいっそのこと慌ててしまっている。

「おい!」

そして、手を離そうとした。

「ダメ!」

やだ。離さないで。

「え?」

もう一度手をギュッと握る向坂。

「手を握ったまま…聞いて。」

そして、わたしも向坂の右手をギュッと握り返した。

「わたしね…わたし…」

「待て。」

「え?」

向坂は手を握ったまま、わたしを見た。

「こっち見て。」

わたしは、ゆっくりと顔を上げた。

「好きだ。奈桜。」

え…?

向坂の整った綺麗な顔が真剣な表情でわたしを見つめている。

え?今…なんて?

向坂はわたしの手をギュッと握ったまま、わたしを真っ直ぐ見つめて…

わたしを…
わたしを…
好きだと……言ったの?


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