不純異性交際 -瀬川の場合-
同窓会の知らせ
「はあぁああ〜〜〜!!!ショックすぎるぅ〜〜〜……!!」
わざとらしく大きなため息をつく私に、親友の紗奈が言う。
「いやいや、ネタでしょ?まぁミライは瀬川のこと気に入ってたもんねぇ。」
私と紗奈は小学生の頃から仲が良く、当時は家もすぐ近くだった。
ほとんど毎日いっしょに登下校していたし、中学での部活も同じテニス部。
瀬川くんと言うのも私たちの同級生で、私が彼と仲良くなったのは中学に上がってからだった。
同じクラスで、隣の席。
背がとっても高くて、剣道部に所属していた。
「ネタじゃないよ、マジでショックなんだよぉぉう…」
あの可愛かった少女時代はあっという間に過ぎ去り、今私たちは30歳。
瀬川くんが同級生と結婚したという情報を耳にして、私はすごくショックを受けているところ。
「でもまさか、相手が紀子だとはね。」
興味がなさそうにも聞こえる紗奈の言葉に、中学時代の紀子を思いだす。
当時からほとんど関わりがなかったし、そのあとどうしていたかも全然知らなかった。
知らぬ間に、まさか瀬川くんと恋に落ちていたなんて…!
「う…うえ〜〜〜ん…!!!」
よからぬ妄想が広がり、また駄々をこねる。
「これこれ、あんたにはフミさんがいるでしょうが〜」
フミとは、私の旦那である。
「紗奈さぁん…それとこれとは違うのよぉ…」
「…どう違うのよ?」
ほおずえをつきながら黙る私を、紗奈はニヤニヤと笑いながら見つめている。
瀬川くんが教師になったという話は、何年か前に友達から聞いていた。
あとから聞いた話によると紀子も教師を志していたらしく、2人には何かと接点があったみたいだ。
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そもそも中学に上がってから、私にはコウヘイ君という好きな人がいた。
コウヘイ君と瀬川くんは小学生の頃から仲が良くって。
私がコウヘイ君のことを好きだって瀬川くんは知っていたから、よくからかわれていたっけ…
「コウヘイ君が結婚したならショックってのも少しは分かるけどさぁ。」
爪をいじりながらつぶやく紗奈は、最近お腹が大きくなってきた。
予定日は半年後だけど、子供の父親は隣に居ない。
「コウヘイ君はさぁ…憧れだからさぁ…」
そう。
コウヘイ君のことが好きだったし、バレンタインにはチョコを渡したりもした。
だけど今思えば、ほとんど話したことがないしどんな人なのかもよく知らないのである。
まだまだ子供だった私の恋愛は"憧れ"だった。
コウヘイ君は、一見おっとりしたタイプに見えるけれどテニスがすごく上手だった。中学1年生なのに先輩たちを追い抜いて、いろんな大会に出場していた。
そういえば瀬川くんも剣道が上手だったみたいだけれど、活動場所が違ったから全然知らないなぁ…。
「……ライ…ミライってばー!ちょっと!聞いてるー?!」
紗奈の呼びかけにビクッとしてしまった。
「ん!?なに?ボーッとしてた!」
「だからね、今度同窓会があるって話じゃん。グループチャット見た?」
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