不純異性交際 -瀬川の場合-
話を聞くと、
"飲みに出かけて酔い潰れた紀子を瀬川くんが迎えに行った"
とか、
"昼間から酔っ払った紀子が瀬川くんの職場である学校に電話をかけてきて大騒ぎした"
とか、なかなかの荒れ具合のようだった。
「それは、誰でも疲弊するだろうねぇ…」
「だよね。そんなだから、同窓会に2人そろって来るとは考えにくいような気がする」
…たしかにそうかもしれない。
「瀬川くん、月に1〜2回はこっちに帰ってきてるみたいだったけど。そのときは紀子がいる家に帰ってるんじゃないの?」
「う〜ん、どうだろう。もう旦那も瀬川くんとほとんど関わりが無いし分からないなぁ。
………ーーっていうかミライ、瀬川くんのこと気になりすぎじゃない?(笑)」
いやいやいや…と慌てて紅茶を口にする。
「そうじゃないけど…仲良かったしさ。みんなコウヘイ君のことでからかってくるけど、あれは憧れだし。私は瀬川くんの今のほうが気になるよ、正直」
優しくクスクス笑いながら、奈美は最後のピザを食べる。
「なんだか分かるかも。私もミノルと会えるの、ちょっと楽しみだし」
ミノル君も私たちの同級生で、高校生の頃に奈美と付き合っていた。
サッカーが上手で、女の子からもモテていたっけ。
背の高いミノル君に引けを取らないほど長身でスラッとした奈美。
2人の立ち姿はとってもお似合いで、素敵だった。
「あーっ!そっか、ミノル君も来るのかぁ。どんな顔して会うのか私も楽しみだわ(笑)」
「ちょっとやめてよぉ(笑)ミノルももう結婚してるし、なにも期待してないんだから。…ただ、なんだか昔に戻ったみたいにワクワクするよ」
「うん、私も。それにしても…なんであの頃はコウヘイ君が好きだったのに、今は瀬川くんにこだわっちゃうのか…自分でも分かんない」
ピザを食べ終わってフキンで口を拭いた奈美は、わざとちょっと低いトーンでこう言う。
「空想の恋、だね。」
「空想の恋…?なにそれ(笑)」
「だってさ、瀬川くんとミライはもう何年も会ってないでしょう?そのうちに当時の思い出と妄想をごちゃ混ぜにして、架空の恋をしちゃってるんだよ。きっと!」
「…………まぁ、…一理、ある…」
「あれぇ?意外と素直だね。でもね、そういうのは会ってみるとなんか違ったりして、冷めちゃうものだよ。たぶんね(笑)」
「あはは。そうかもね(笑)ま、とにかく私は、久しぶりにみんなで集まれるのが嬉しいよ。」
ーー私はなにも期待していない。
久しぶりに会えればそれでいいんだ。
「そういえば、事前にバラ組で集まるときはケイが来れるかもって言ってたよね。」
「そうだね!久しぶりだよねぇ。奈美はその日おそくまで大丈夫なの?」
「うん、お母さんにも伝えてあるし、恭介ももう離乳食たべてるし、大丈夫!ほんとに手がかからないんだよ。親思いの良い子を産んだわぁ…」
「アハハハ(笑)よ〜し、じゃあ同窓会ではパーっと盛り上がれるね!」