不純異性交際 -瀬川の場合-
店内がかなり盛り上がってきた。
みんなそれぞれ好きなところへ移動したり、肩を組んではしゃいだり、隅の方では当時からおとなしかった子たちがクスクスと談笑していたりする。
「昔に戻ったみたいで楽しいね。」
私にだけ聞こえる声で奈美が言う。
「ね!楽しい~!そういえば…紀子はやっぱりいないね」
奈美よりもさらに声をひそめて答えると、奈美は口を曲げながらうんうんと頷く。
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いつのまにか私と奈美以外の皆はどこかに移動していて、別の同級生が座っている。
そこへミノル君もやってきて、久しぶりの再会に乾杯をしたところで、離れたところから私も別の友達に呼ばれた。
ミノル君と奈美もおしゃべりを楽しんでいるようだし、私も席を離れる事にした。
しばらく違う場所で同級生との談笑を楽しんでいたけれど、節々で瀬川くんの姿を探してしまう。
あれ……見当たらないなぁ。
つい気をゆるめてキョロキョロしていると、突然うしろから声をかけられた。
「…誰か探してんの?」
そこには瀬川くんが立っていて、私はびっくりしてうまく答えられない。
「えっ?!あっ…いや、べ、べつに?」
瀬川くんは歯を見せて笑うと、私の隣の椅子に座った。
同じテーブルには瀬川くんと仲が良い男友達もいて、「お、瀬川〜!」と歓迎されている。
いろいろな同級生が入れ替わり立ち替わり現れた。
ひっきりなしに笑いが起きて、懐かしい話もたくさん出てくる。
話をするたび、瀬川くんの優しくて真っ直ぐな視線にドキッとしてしまう。
結局それから一次会が終わるまで、私と瀬川くんがそこから移動する事はなかった。
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「みなさん!!
みなさーーーーん!」
なかなか静まらない店内に、平野の手拍子と声が響く。
「そろそろ一次会は終了で〜〜す。二次会は近くのダーツバーなので、みんなで移動する感じでお願いしまーす!」
それを聞いて早々に支度をする者や、すでに酔っ払ってダウンしている者もいる。
私も店を出なきゃと、奈美とアンナを探した。
奈美は、相変わらずミノル君と楽しそうに話している…ーーー
「…お邪魔なんでない?」
一緒に奈美たちを見ながら瀬川くんが言う。
「ちなみにもう1人の相方は一番最初に楽しそうに出てったよ(笑)」
「えっアンナが?いつのまに〜!」
言いながら上着やバッグを準備する。
奈美たちの邪魔をしても悪いし、アンナを追いかける事にした。
「瀬川くん、二次会いく?」
「そのつもりだけど」
「そっか!じゃあまたあとで」
そう言い残し、片手を上げて返事をする瀬川くんを確認してから私は店の外へ出た。