不純異性交際 -瀬川の場合-

店の外に出ると、お酒のせいか瀬川くんのせいか…火照っていた頬が、ひんやりと冷える。

伸びた道の先、アンナはほんの20メートル先くらいで仲間たちとはしゃぎながら歩いていた。


小走りで追いかけながら、ふと思う。

すっごく寒いなぁ…

……ん?!?!

あれ?!

ーーー私はお店にマフラーを忘れたことに気付く。


アンナは私を見つけて、「ミライ〜!!ダーツするぞぉ〜!」とノリノリだ。


「マフラーわすれたっ!アンナ、先行ってて〜!」

すぐさま踵を返してお店に小走りで戻る。
うしろからアンナの声がした。
すっかり出来上がっているようだ。


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お店にたどり着き、ガラスのドアを開けて勢いよく店内に入る。


…-ーードンっ!!!!


突然なにかにぶつかった。


「痛っ!!!ごめんっ……」

とっさに謝りながら見ると、瀬川くんが立っていた。


「え、なにしてんのお前」

私は瀬川くんの胸元に勢いよくぶつかってしまったらしい。



「マフラーわすれちゃって…」
鼻を押さえながら言う。

「これだろ?椅子に置いたままだった」
そう言いながら、瀬川くんは手に持っていたワインレッドのマフラーを私の首にひっかける。


「あ、そうこれ。ありがとう」

言っている間に、瀬川くんはマフラーをぐるぐると巻き付ける。
大きな手が目の前を何度も通り過ぎる。



「ん?どうやんのこれ?」
などと言いながら、結局全部を私の首に巻きつけて笑う。


「瀬川くん!!巻きすぎだよぉ」

となりではコウヘイくんもケラケラと笑っている。


「っていうかお前、前も見ずに突っ走ってくんの危なすぎ(笑)」

「ごめぇん…!」


相変わらず鼻を押さえている私に、
「ミライちゃんって可愛い人だね。」
とコウヘイ君が言った。


突然すぎて理解できないでいると、店の中からどんどん人が出てきて押し出される形で外に出た。


「よし、行こう!」

瀬川くんは私の肩を持って向きを変え、背中をポンと叩いた。

コウヘイ君の言葉も瀬川くんのボディタッチも、何がなんだか分からないまま歩き出す。






「お前チビだな。」

瀬川くんの一言に、私はタイムスリップしたような錯覚に陥る。
あの頃から背が高かった瀬川くんに、私はいつもチビだとからかわれていた。


「私がチビなんじゃなくて、瀬川くんが高すぎるんだよ。一体何センチなの?」

「最後に測ったの大学のときだけど、181だったかな。お前は?」

「でかっ!…私は……151だけど…?」

「やっぱチビじゃん(笑)」


もぉ、うるさいなぁ!なんて笑いながら、背の高い2人の真ん中で私ははしゃいでいた。

携帯が鳴って、画面を見ると奈美からだった。


「もしもし?奈美?ミノル君と話してたから、先に店出たよ〜!」


「うん、ごめんね、ちゃんと挨拶できなかったんだけど…恭介の事もあるし、私やっぱり二次会はやめとこうと思って」


「あぁ、そっかぁ。もっと一緒に飲みたかったけど、恭ちゃんが待ってるし…また今度だね!ミノルくんは?」


「うん、一緒。タクシーで回ってくれるって言うから、ミノルも二次会は不参加だね。」


「え〜優しいなぁ。奈美、気をつけて帰ってね。またメッセージする!」


「うん!ミライもたくさん楽しんで、帰りは気をつけてね。」

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