不純異性交際 -瀬川の場合-

お店を出る前にトイレを済ませようと、私は席を立つ。

戻るとアンナは起きていて、
「彼氏くんがねぇ~、迎えに来るのぉ~~」
と、ご機嫌そうに話す。

すごく酔っ払っていて一人では歩けないアンナを抱えながら立ち上がった。


…あっ!お金!


「平野~!私お金…」

「え?もうもらってるよ~!」


私、お金払ったかな?
いや・・・払ってないよね?あれ?


脳内で確認しながら、とりあえずアンナを抱えて店の外に向かうと、瀬川くんがドアをあけてくれる。


外には黒いSUVが停まっていて、1人の若い男の子が立っていた。
私たちを見つけると、「アンナちゃん!」と言って駆け寄ってくる。



「もしかしてアンナの彼氏くん?」
と聞くと、男の子はハイ!と元気に返事をする。


「アンナ!ほら、彼氏くん来てくれたよ」

アンナは少しだけ目を開けると、彼氏に抱きついて甘える。

なんとか助手席に乗せられると、窓をあけてこちらに手を振った。


「ミライ~!楽しかったぁ~!!またね~!!」


私たちにきちんと挨拶をしてから彼氏も車に乗り込み、2人は帰っていった。



「…嵐が去ったな。(笑)」

一緒にアンナの乗る車の後ろ姿を見送りながら、瀬川くんがつぶやく。

「ほんと(笑)調子いいんだから。でも良かった、彼氏くん来てくれて」



持ち物を取りに店内に戻ると、平野やコウヘイ君たちが何やら盛り上がっている。

「なになに?どうしたの?」

「あ、ミライちゃん!アンナちゃん無事だった?あのさ、次は同級生みんなで旅行に行きたいって話なんだけど、温泉とかキャンプとか…もうみんな、好き勝手言うんだよ〜(笑)」

平野の隣ではコウヘイ君が「絶対キャンプっしょ!」と燃えている。


「え~、温泉がいいよ」とか、「朝までハシゴ酒しようぜ!」なんて声がわいわい飛び交う。



「ちなみにミライちゃんはどんなのがいい?」

平野に聞かれて想像してみる。

キャンプならみんなでお料理したり出来るし…と、バラ組のみんなを思い浮かべる。


「う~ん…キャンプかな?みんなで作ったもの外で食べるなんて最高だね!」

コウヘイ君はよっしゃあといった感じでガッツポーズをする。



「じゃあ…キャンプ……行っちゃう?!!」

平野がその場を煽るように言うと、ワーワーとみんなが賛成した。
もし実現しなくても、そうやって盛り上がれるのが嬉しかった。





店を出て挨拶を交わし、だんだんとみんなが散り散りになっていく。

最後に平野と別れると、残るは瀬川くんと私だけだった。


「…そうだ!瀬川くん、もしかして私の分のお金出してくれた?」

「あぁ、ついでに払ったかも」

「かもって何?(笑)ごめんね、今払う!」


バッグをあけようとする私の腕を、瀬川くんがぐいっと引き寄せる。



「…え?」



至近距離で私をじっと見つめる瀬川くんに、戸惑いが隠せない。


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