不純異性交際 -瀬川の場合-

翌朝、9時過ぎに目が覚めた。

チェックアウトは10時なのに…急がないと!

昨夜のことを今はなるべく思いださないようにバタバタと身支度をして、午前中の澄んだ空気を感じながらアップルへ向かう。


ーーーーシャランッ…


「マスターおはよう!昨日泊まりだったから、今日も来ちゃった。お昼までちょっと仕事させて〜!」

「おはよう。同窓会は楽しめたかい?さ、座って。コーヒーでも淹れようか。」

「うん、お願い!」


私はそう言うと、窓際の特等席に座りパソコンやらをテーブルに準備する。


…しかし、仕事をしようと思っても、昨夜の瀬川くんの手の温もりやキスがどうしても頭から離れない。

なんて連絡しようか…

瀬川くんは同級生のグループチャットには入っていないけれど、昨日連絡先を交換していた。


"昨日はありがとう…楽しかった……"とか?
無難な言葉しか思い浮かばない。
いや、無難で良いんだけれど、なんだか考えすぎてしまう。


とはいえ連絡しないのもなんだかおかしいし、なにより連絡を取りたい。


とっても良い香りのするコーヒーをマスターが運んできて、カリカリに焼いた小さめのバケットと一緒にテーブルに置いてくれる。


「わ!美味しそう〜!マスターありがとう。」

にっこりと笑ってすぐに奥に戻っていくマスターは、仕事の邪魔をすまいと思っているのかもしれない。



バケットに付いていた小さなバターの包紙を開けていると、携帯が2回ほどピロンと鳴った。
一瞬ドキッとして、心の中で深呼吸をしながら冷静にバターを塗る。


携帯を見ると、バラ組のトークルームでアンナが騒いでいた。

[ 昨日めっちゃ楽しかった〜!!]

[ でも後半すごい酔っちゃって、あんまり覚えてない(笑)]

アンナ、昨日すごく楽しそうだったもんなぁ…。


[ 行きたかった〜]
というケイのメッセージや、
[ たまには思いっきり酔っ払うのも全然アリ!]
という紗奈のメッセージでトークルームは盛り上がる。



[ ダーツバーに彼氏くんが迎えに来てくれて、礼儀正しく挨拶してアンナをしっかり連れ帰ったよ〜!]


と送ると、


[ てへ!ご迷惑おかけしました〜!ダーツバーのあとは三次会とかあったの??]


とアンナが聞く。


また瞬時に昨夜の出来事を思いだし、胸がドキドキしてくる…。


[ 三次会は無かったよ!
そういえば平野たちが、つぎはみんなでキャンプしようって言ってたよ〜]


そう返信すると、持っている携帯からピロンと音が鳴った。
違うメッセージが来たのかな?


確認すると、そこには"瀬川 直斗(なおと)"という文字が浮かんでいた。

考えるより先にメッセージをひらく。


[ おはよ。起きれた?
俺は昨日のお前のせいで寝不足。今から帰るところ。]

とっさに、クスッと笑ってしまう。


[ おはよう!昨日はすごく楽しかった。ありがとう。
その意味深に聞こえる言い回しは何なのかな(笑)
ところで、結局お金払いそびれちゃってごめんね。
今度一杯おごらせてください!]


送信すると、私はマスターが焼いてくれたバケットを口に含む。


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