不純異性交際 -瀬川の場合-
ケイはバラ組で1番最初に結婚も出産も経験している。
「なんか昔ちょっと言ってたよね、旦那さんのこと」
「そうそう。あいつ、結婚前からの遊び相手と結婚してからもしばらく浮気してたんだよ。でも知ったときにはもう子供も生まれてたし、別れ話にはならなかったね。今だったら慰謝料取って別れてもいいけどさぁ(笑)」
結婚してからもう12年も経つケイは、ある意味すごく貫禄がある。
「それにね、私も1回だけ恋しちゃったことあったよ。4年か5年か前に。子供のことが忙しくて、自然消滅だったけどね」
「そうなのっ?!」
「でも、あくまで恋だから。付き合うとかそういうんじゃ、全然ないけどね。キスはした(笑)…だからミライのことを責める権利は、私にはない(笑)」
笑うケイに、奈美が喋りだす。
「そもそも、結婚したらときめいちゃいけないのかな。まぁ…キスはアウトだろうけどね(笑)ときめきなんて誰にも、何にも止められないものじゃない?」
「そうそう。浮気だって人によってラインが違うじゃん。私、旦那が誰かとキスしても全然大丈夫だよ?」
「え~!ほんとに?」
「いや、ほんとほんと!風俗とかも、べつに平気かも。旦那は愛してる人ってより、もう家族なんだよね。どこで性欲処理してても興味ない。…ただ、いやな気持ちになるのは”本気のヤツ”かな」
「ほんとに好きな人ができちゃって浮気する、みたいな…?」
「うん。それだと話は変わってくるかな。お金で成り立ってる性欲処理の関係とは全く違うし」
私と奈美は感心するように「なるほど、たしかに」と頷いた。
…
私は瀬川くんとの事を考えていた。
きっと奈美も、ミノル君のことを思い浮かべている。
「そういえばミライは、瀬川くんと次に合う約束とかはないの?」
「うん、今のところ無いね。県外にいるし、2週間に1回くらいしか帰ってこないし…」
「今のところ、ね(笑)」
「いやっ!違うの、またみんなで集まって飲んだりするかもしれないしさ、そんな変な意味じゃ」
ハハハハ!と2人は笑う。
「なんだか学生時代に戻ったみたいで、言っちゃ悪いけど私はすごく楽しいよ(笑)でも、おおっぴらには出来ないからね。用心することだよ」
締めくくるようにケイが言うと、私は深く頷いた。
隣を見ると、奈美も他人事ではないように神妙な面持ちで頷いていた。
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2人と別れ、瀬川くんとのトークルームをひらいてみる。
…深い意味は、ないからね!
自分に確認してから、[今度はいつ帰ってくるの?]とメッセージを送信した。