不純異性交際 -瀬川の場合-

あれから、瀬川くんの返事よりも先に平野からのメッセージが届いた。

[ お疲れ様!
こないだ話してたキャンプの話だけど、飲み会と違って幹事1人だとちょっと大変なんだ。俺の独断なんだけど、何人かで企画していけないかなぁと思ってね!ミライちゃん、良かったら協力してもらえないかな?]


私は同窓会を企画してくれた平野に本当に感謝しているし、またみんなで集まりたいので快くOKした。


[ 私で出来ることならもちろん手伝うよ!具体的には何をしたらいい?]


[ ありがとう!感謝!
コウヘイと瀬川にも声かけてあって、あと女の子は綾香ちゃんを誘ってあるよ~。
ひとまず来週にでも、幹事だけで打ち合わせも兼ねて食事でも!]


綾香ちゃんは中学生の当時から変わらず、ふんわりとした可愛らしい子だ。
たしかにこないだの二次会のときも最後まで参加していて、キャンプの話も把握しているはずだった。


[ 了解だよー!それじゃ、また打ち合わせの日程が決まったら教えてね!]


バラ組の誰かが幹事に選ばれればもっと楽しかったな、と思ったけれど、子供が居たりしてなかなか難しいか…と納得する。



夕方過ぎ、瀬川くんから返信が届いた。

[ 今まで仕事だった。遅くなって悪い!
来週末帰る予定だよ。なに、聞くってことは会ってくれんの?(笑)]


夕飯を作る手を止めてメッセージを見ると、にやついてしまいそうな口元に気づく。


[ さっき平野から連絡が来て、キャンプの打ち合わせで食事でもって言ってたよ!
瀬川くんにも声かけたって言ってたから、もう聞いてる?私はOKしたけど、瀬川くんは都合どう?]


私は作り途中だった夕飯の仕上げをして、ラップをかける。
フミは今日も、”梅宮さんと飯”だ。

ホットミルクに蜂蜜を少し入れて、かき混ぜながら仕事部屋に入る。
ここは普段フミも入ってこないし、自分の好きな本やマスコットを置いてリラックスできる場所だ。



しばらくすると瀬川くんから再びメッセージが届く。

[ 今、平野と電話で話してた。お前は何してんの?]


”今何してる?”なんてメッセージが来たことがなくて、私は違和感を感じながら返事を打った。


[ 家のことはいろいろ済んだから、仕事部屋で1人まったり中だよ~。瀬川くんは?もうご飯たべた?]


送信ボタンを押すと、ほんの数十秒後に瀬川くんからの着信が鳴る。
ビクッとして、心臓がドキドキと脈打つ。


通話ボタンを押すと、少しだけ疲れたような瀬川くんの声が聞こえる。

「もしもし?」

「うん、電話めずらしいね?お仕事お疲れ様」

私は長いこと自分の夫にも言っていないセリフを投げかけた。



「突然かけてごめんな。大丈夫?」

「うん、今日は遅くまで1人だから…」

「…そっか。打ち合わせの話、平野に聞いたよ。普段ならぜっってぇ断ってるけど、今回はOKした(笑)」

「あはは、瀬川くんは幹事やるタイプじゃないもんね(笑)」


「絶対ないね。でOKしたらしたで、すげぇ驚かれてさ。”ミライちゃんがいるからでしょう~”って、からかわれた」


瀬川くんが声を変えて平野のマネをする。


「私のこと?アハハ、平野は何を言ってるんだろうね」


ふっ…と瀬川くんも笑って、少し低い声に変わる。


「お前がいるからって理由しか無いけどね」


私は年甲斐もなく、はにかんだ。

「…嬉しい。です…」


「なんで敬語なんだよ(笑)でも、お前からメッセージ来てさ、来週会えるのかと期待しちゃったよ。」

「会えるよ!」

「打ち合わせで、だろ(笑)」

「うん…でも私は……」


「ん?」

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