不純異性交際 -瀬川の場合-

それにしても、綾香ちゃんは酔っているせいかコウヘイ君への甘え方がすごく積極的で可愛いなぁ…。
私は自分の性格と比べ、可愛らしい綾香ちゃんに尊敬にも近い念を抱いていた。

私もあんなふうに瀬川くんに甘えられたら良いのにな…


トイレを済ませ席に戻ろうとすると、狭い通路でコウヘイ君と鉢合わせた。

「あっ」

立ち止まるコウヘイ君に、私も自然に立ち止まってしまう。


「あぁ…疲れた(笑)綾香ちゃんすごい酔ってる…」

「アハハ!でも可愛いじゃん、見ててほっこりするよ」


コウヘイ君は数秒間私を見つめ、

「あぁいうタイプ、苦手なんだよね。」
と言いながら少しずつ私に近づいてくる…。


なんだか変な雰囲気…?と思い歩き出そうとすると、コウヘイ君に道を塞がれてしまう。


「俺、ミライちゃんみたいな子がいい」

ゆっくりと、でも確実に近づいてくるコウヘイ君の顔。


私がつい、うつむいてしまうと顔を覗き込むようにコウヘイ君が背を曲げる。

「…照れてる?可愛い」

そう言われると私は瀬川くんに対する恥ずかしさとは別の意味で、耳まで熱くなってしまう。



足音がして、ふと見るとそこには瀬川くんが立っていた。
それに気付いたコウヘイ君は、平然と腰を曲げたままゆっくり瀬川くんの方を見る。


「……あの子、お前の事すげえ呼んでるけど」


綾香ちゃんが呼んでいると伝えると、コウヘイ君はめんどくさそうに顔をおどけさせ席へ戻っていく。


2人だけになり、瀬川くんに見つめられる。
私は吸い込まれそうになりながら見つめ返す。


「何話してたか、聞かないほうがいい?」


「そ、そんな事ないよっ…?というか、ほとんどなにも話してないよ…」


また少しの沈黙。

コウヘイ君とはなにも無かったのに、なんだか複雑な気持ちになる。


「まぁお前は…コウヘイのこと好きだったもんな。俺には何も口出す権利ないしな。」

瀬川くんはトイレへと歩き出してしまう。



「どうしてそんなこと言うの」

腕を掴むと、振り返って私をじっと見る。



「瀬川くん……会いたかった」

恥ずかしさより先に、どうしても伝えたかった。
私はコウヘイ君じゃなくて、瀬川くんが…ーー


見つめ合い、どちらからともなくキスをした。

同窓会の夜と同じように唇を優しく吸い上げられると、私は確かに瀬川くんの唇をもう知っていた。あの夜のことは夢ではなかったんだ。

瀬川くんは私の腰を強く引いて、熱のこもったキスを続ける。

冷たいお酒で冷えた唇が、みるみる熱を帯びていく…


私の下半身が震えだす頃、そっと唇を離し言う。

「ごめん、俺すげえ幼稚だよな。……俺も会いたかったよ。」




私の頭を大きな手で包み込んで抱き寄せると、席の方から綾香ちゃんの声が聞こえて来る。
コウヘイ君に甘えているようだ。


「俺あとで戻るから、先戻りな」

優しく促され、私はコクンと頷いて別れた。




できるだけ平然を装って席に戻ると、綾香ちゃんは更に酔っ払った様子でコウヘイ君にボディタッチしている。

隣では平野が苦笑いで私に「おかえり~」と言う。


コウヘイ君は綾香ちゃんのボディタッチを無視して、「遅かったね」と意味深に投げかけた。


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