不純異性交際 -瀬川の場合-
同窓会までは約1ヶ月ある。
紗奈の家から帰宅して、夕飯の準備をしながら"なにを着て行こうか"とか、"美容院に行こうかな"とか、今からいろいろ考えてしまう私は一体何歳なんだろう…。
ーーガチャッ
…フミが帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
いつもどおりの、形どおりの挨拶を交わす。
私たちは結婚して5年。
ちゃんと数えてはいないけど、少なくとも2年はスキンシップを取っていない。
きっと仲が悪いわけではないのだけど、仲良しか?と言われれば全くそうも言えない。
今さらラブラブな2人に戻りたいとか、女として見て欲しいとか、そういうことは思わなくなった。
仕事して、帰宅して、夕飯の支度をして、少ない会話をして、眠る。
---それが私たちの、当たり前の日常。
フミは仕事から帰るなり、ソファでだらしなくうなだれながら携帯ゲームをしている。
いつもの事だ。
私は夕飯の支度の続きをしながら、また同窓会への思いを巡らせる。
あの頃、一緒に青春を過ごしたみんなとまた集まれる。
30歳になったみんなは、どんなだろう。
ーピコン!
アンナからのメッセージだ。
[来週の金曜日、そっちに用事があるんだけどミライ時間ある?お茶でもしよ〜よ〜(*^_^*)]
私はフリーランスでデザイナーをしている。
それ故に、自由な時間はわりと多い。
[わーい!ランチでも行こうか!]
私の顔はほころんでいた。
フミは相変わらず私には興味がないようで、携帯をいじりながらひざを掻いている。
「ごはんできたよ。」
「ほーい。」
こっちを見ることもなく返事をするフミに対して、もうなにも思わなくなってどれくらい経つだろう。
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金曜日の11時、私はアンナと待ち合わせていた。
会うのは2ヶ月ぶりだ。
「ミライ、久しぶりぃ〜!元気してた?もう私お腹ぺこぺこだよ〜」
明るくていつもニコニコしているアンナは2年前に大好きな祖父を亡くし、落ち込んでかなり痩せてしまった。
でもなんだか今日は顔色も良くて、少しふっくらした気もする。
「久しぶり〜!私もお腹すいたぁ。早くアップル行こう!」
"アップル"は昔ながらの喫茶店で、私たちバラ組もよく利用するお店。
「私アップルのナポリタン大好きだからね!」
何十回も聞いているアンナのセリフを今回も聞けて、言葉にできない安心感が込み上げる。
「もうそれ定番の決まり文句だね(笑)」
大人になるにつれてみんなそれぞれ忙しくなり、なかなか全員で集まれるタイミングは無い。
そんな中でも、こうしてバラ組のメンバーとちょこちょこ会えるのはやっぱり嬉しい。
「もう全然、みんなで集まってないもんねぇ。」
アンナが口を尖らせる。
「う〜ん、そうだよね。仕方ないね…みんな忙しいし」
「そうだけどね。ケイなんて私もう1年くらい会ってないよぉ?」
「私もだよ。なんか忙しくお母ちゃんしてるよね!
娘がバレー始めたってね。毎週練習とか応援で大変そう」
「そういえばそろそろ紗奈の赤ちゃん、性別わかったかな??」
そんな近況話をしながらアップルへ向かう。
秋晴れの今日はとっても気分が良い。