不純異性交際 -瀬川の場合-

紗奈は今回のキャンプに来てくれる事になったが、年末という事もあってバラ組では私たち2人だけの参加だ。


[ 明日何時に来る?]

紗奈からのメッセージに、

[ 18時頃には着けるはず!]

と返信する。


クリスマス、特にこだわりがあるわけでもないけれど紗奈と過ごす約束をしたのだ。

お姉さんは看護師をしていて、その日は夜勤でいないらしく紗奈の家にお邪魔する事になっていた。


-----


19時頃フミが帰ってきて、
「明日紗奈の家に泊まってくるね」
と声をかける。


「へぇ。分かった。けど、なんでわざわざ?
いつもなら何も言わずに仕事で泊まりとかあるじゃん」

やっぱりクリスマスなんて行事は彼の頭の中には無いらしい。

「いや、なんとなくだけどね」


そう言って私はまた仕事部屋にこもる。



-----


翌日、仕事を済ませ紗奈の家に行くため準備をする。

電車に乗り込みフゥと息を吐くと、携帯が震えた。


[ 今日クリスマスって知ってた?(笑)]

突拍子もない文章に吹き出しそうなのをこらえ、瀬川くんからのメッセージを見つめる。


[ 知ってたよ、瀬川くんもしかして今気づいた?(笑)
今、紗奈の家に向かってるところ。
今日は仲良くお泊まりだよ~]


[ 今日、生徒に言われて気付いた(笑)
俺はもうすぐ正月休みになるのが嬉しい。
あ、クリスマスプレゼントちょうだい。]


そっか、お正月かぁ。これまた特に予定はないけれど。
それにしても瀬川くんがおねだりなんて、珍しいな…


[ なにがほしいの?(笑)]


ギャグで、ロレッ○スの腕時計とか言ってくるかな?
それとも、一杯おごれ!っていうパターンかな?

なんとなくそわそわしながら待つと、すぐに返信が来た。


[ 会いたい。会えればそれでいい]


瀬川くんは、本当にズルいよ…


[ じゃあ私にもプレゼントちょうだいね。]
と私が返信を打った頃、紗奈の家の最寄り駅に到着した。


駅のデパ地下で紗奈の好きそうな惣菜やローストチキンを買う。

クリスマスイブの今日は沢山の人たちで賑わっていて、私まで気分が踊ってくる。


自分には赤ワインを、紗奈には可愛らしいパッケージのハーブティやノンアルコールのカクテルを用意した。


タクシーに乗り込み行き先を伝えると、にぎやかな駅前を軽やかに走り出す。





紗奈の家に到着すると、室内はストーブでほわほわと温まっている。


「ホーホッホッホ!」
買ってきたものをテーブルに並べると、

「ずいぶんと食いしん坊なサンタクロースが来たね(笑)」
と笑われる。


「あ!これこれ~紗奈が作るタルト、美味しいんだよね~。ブルーベリー、大好き!」


私は約束していたタルトを見て喜んだ。
いつもトッピングが変わるそれには、今日はブルーベリーが乗っている。


「っていうかミライ、本当にたくさん買ってきたね!うちのも合わせると絶対食べきれないよ(笑)」

「いんや、完食してやるぅー!
…あ、でもせっかくだからお姉さんにも残しておこう!」

「大丈夫、心配しなくても絶対あまるから(笑)」


2人でケラケラと笑いながら、グラスや小皿の準備をする。






「乾杯。」

バラ組の中でも1番付き合いの長い紗奈といるのは、本当に心が落ち着く。

2人で写真を撮ると、バラ組のトークルームに送信した。

ケイからは子供たちの様子、奈美からはクリスマスのお料理、アンナからは彼氏くんとの2ショットがそれぞれ送られてくる。

皆それぞれのクリスマスを、目一杯楽しんでいるようだ。


「アンナの彼氏くん、イケメンだねぇ!」

「うんうん、同窓会に迎えに来た時もすっごく好青年だったよ!」


そういえば瀬川くんからの返信が来ないな、と思いながら紗奈とのクリスマスパーティーを楽しむ。


< 31 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop