不純異性交際 -瀬川の場合-
「…こないだの…瀬川との話だけどさ」
「あぁ、うん…?」
「私、暗いことばっかり言っちゃったなぁって。
…でもね、明るく元気にいられるのが1番だと思う。瀬川といることでミライが穏やかに過ごせるなら、それもいいと思う。」
「そんな、全然。ちゃんと言ってくれて嬉しかったよ。ありがとう…。」
「今日はトクベツに、のろけとか聞いてあげる」
「ねぇ、それ紗奈が聞きたいだけでしょ~!?(笑)」
「あ、バレた?」
「…私ね、瀬川くんにはかなり元気、というか心の栄養をもらってるよ」
「キッスという刺激もね」
紗奈が口を尖らせてからかう。
「もぉ~!紗奈~!?しかも、”キッス”って言うなぁ~!!(笑)」
肩を叩き合いながらゲラゲラ笑っていると、携帯が鳴っていることに気付く。
画面を見ると瀬川くんからの着信だ。
紗奈は私に、優しい笑顔を浮かべている。
「ごめん!ちょっとだけ出てくるね」
そう言って私は玄関の外へ出た。
…
ドアの外はシーンと無機質に冷えている。
「もしもし?」
「もしもし、お疲れさま!」
「相棒と楽しく過ごしてるとこごめん、ちょっとだけ」
「ううん、大丈夫だよ。まだまだ夜は長いし(笑)」
私はその場にしゃがみ、ドアにより掛かる。
「お前さ、プレゼント何が欲しいの?」
「えっ…?本気にしてくれたの?(笑)」
「あぁ、いらないの?じゃあいいけど」
「いや!いるいるいる!いります!」
「なんだよ(笑)何が欲しいの?」
「えっとねぇ……」
瀬川くんは、私に会えればそれでいいと言っていた。
私は、何が欲しいかな…
「…んー…。もう1回、…」
「?なに…?」
「もう1回、ぎゅって…してほしい…」
自分で言ってから急に恥ずかしくなる。
良い歳して、何を言っているんだろう。
ごまかすように
「って、これもしかしてすごくキモチワルイ?!(笑)」
と笑うと、瀬川くんもクスッと笑っている。
「ピアスとかネックレスとか言うのかと思ったら…
お前それ本当ずるい(笑)」
「ご、ごめんっ!!じゃぁ、えっと…」
「いや、もう取り消せません(笑)…喜んで。」
雪が降りそうな寒さに、息が白く染まる。
「瀬川くん………。」
「ん?」
「ううん。…キャンプ、もうすぐだね!」
「そうだな。さむいぞ~。暖かくして来いよ。
っていうかお前いま外にいる?
もう電話切るわ。付き合わせてごめん。」
「大丈夫だよぉ!
でも…うん、紗奈が待ってるしそろそろ戻ろうかな。
楽しみにしてるね、サンタさん!(笑)」
「こちらこそ(笑)」
…
瀬川くんとの電話を切って玄関に入ると、指先がキンキンに冷えて凍えていた。
「おかえり~。仲がよろしいですこと」
紗奈がお局風に言う。
「いや、あの…キャンプもうすぐだねって話をね!?」
「はいはい、落ち着いて(笑)
でも確かに、あと数日でもうキャンプかぁ。」
「寒いからね、紗奈、靴下たくさん履きなよ?」
「気持ちはありがたいけど、2枚が限界じゃない?(笑)」
私たちは夜遅くまで、人生の隅から隅まで、すべてを確認するようにたくさんおしゃべりをした。