不純異性交際 -瀬川の場合-
冬キャンプ

12月28日。

まさかこんな年末に、同級生たちとキャンプへ出かけるとは思ってもいなかった。

大人10人と、子供が1人の参加となった。
下見とはいえなかなかの人数が集まったと思う。

3台の車で向かう事になり、私と同じ車内には紗奈と、サッちゃんこと幸恵(さちえ)、その子供のシュウトは1歳半だ。

私が運転で助手席には紗奈、後部座席にサッちゃん親子が乗っている。


年末でフミは休みに入ったため、車を使わない。
キャンプに行くことも”お好きにどうぞ”といった具合だった。


「もうすぐ、みんなで寄る約束のサービスエリアだね。シュウト、お菓子買う~?」

「ちょっとミライちゃん、あんまり甘やかさないでよね~(笑)」
そう言って笑うサッちゃんはシングルマザーだ。


「まぁまぁ、せっかくのイベントだし、年末だし?早めのお年玉ということで…ね?シュウト?」

紗奈もシュウトを甘やかす。


「もう、2人は甘々だなぁ~!シュウト、良かったね」


お喋りをしていると、あっという間にサービスエリアに到着した。

世間では年末の帰省が始まっていて、外までお店がたくさん出て賑わっている。


「わぁ!美味しそうなメロンパンがあるよ!」
「くるくるポテトもある~!」

私たちは田舎者丸出し、といった調子で盛り上がった。



車を停めると他の2台に乗っていたメンバーとも合流し、それぞれトイレを済ませたりホットスナックを買いに行く。

外の空気を吸いながら綾香ちゃんを含めた女4人で軽く話していると、自動ドアの前で瀬川くんが小さく手招きしている。

私は話を切り上げて、不自然にならないように彼のもとへ向かった。


笑顔を交わしながら一緒に自動ドアを入る。

「運転お疲れさん。コーヒー飲める?」

「瀬川くんも運転お疲れ様~。うん、ミルクを多めに入れたのなら(笑)」

「子供か(笑)」

そう言うと瀬川くんがカウンターでコーヒーを買ってくれる。

「ん」

「あ、ありがとう。いつもおごられてばっかりだ。今度ホントにおごらせてよね?」

「楽しみにしとく(笑)」



熱々のコーヒーをふぅふぅしながら2人で自動ドアを出ると、シュウトが走ってきて私に抱っこをせがみ、数メートルうしろではサッちゃんが「こら~」と言っている。

私はコーヒーを一旦瀬川くんに預け、シュウトを抱き上げた。

「アーーアーシュ!ン!ンッ!」
シュウトはコンビニを指差して、なにか訴えている。


「あっ!シュウト、お菓子買う約束してたもんねぇ~?見に行こっか。瀬川くん、ちょっと行ってくるね」

瀬川くんにコーヒーを持たせたまま、私はシュウトを抱いてコンビニに向かった。




コンビニに入るとシュウトは
「アーシ!アーシュ!シュー!!」
と言いながらアイスクリームコーナーを指差す。


「おぉ、シュウトはこんなに寒いのにアイスを食べたいのかね。でもねぇ、ママに怒られちゃうかもしれないから、プリンとかにしない?」

プリンやゼリーがあるコーナーに行って見せると、シュウトはすぐに心変わりしたようで好きなものを選び始めた。


少しして、
「コ!!コエ!」
と言ってぶどう味のゼリーに決めたようだった。

「お菓子はいいの?」
と言うと一目散に駆け出して、手に取ったのは卵ボーロだ。


外に出るとみんなはおしゃべりしていて、私に気付いたサッちゃんが
「ごめんねぇ~~ミライちゃん!ありがとねぇ」
と言うと、シュウトに
「ありがと言った?あ、ゼリーも買ってもらったの。いいねぇ~」
と笑顔で話し、ゼリーを食べさせるために近くのベンチへ向かった。


瀬川くんに持ってもらっていたコーヒーを受け取って口に含むと、苦味がぶわっと広がる。

「…んっ!?ニガイ~!」

「あ、そっちブラックか」

平然と交換する瀬川くんを、数人がニヤニヤして見ている。


「仲良くコーヒータイムですかぁ?瀬川、俺の分はぁ?」

駄々をこねるようにコウヘイ君が言うと、瀬川くんが返事をする前に
「私がおごったげる!♪」
と綾香ちゃんがコウヘイ君の腕を引く。

みんなはクスクス笑った。

< 33 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop