不純異性交際 -瀬川の場合-
私と紗奈は早速、じゃがいもや玉ねぎをチェックする。
さすが10人分ともなると結構な量で、私たちは笑う。
紗奈は腕まくりをすると
「炊事場に運ぼう!」
と意気込んだ。
「紗奈はダメだよ、重いから!私たちで運ぶから先に炊事場・・・で・・・!?」
じゃがいもがたくさん入ったネットを持ち上げようとしたとき、横から瀬川くんがひょいと取り上げる。
「俺らで運ぶから。軽いもんだけ持って先行ってて」
「う、うん、ありがとう…さすがに全部持つのは重いでしょ(笑)」
「大丈夫。俺ら、運ぶの以外ぜっったい足引っ張るから(笑)」
瀬川くんが笑うと、
「そうそう。”女の子”は先に行ってて大丈夫だよぉ~?」
と強調してコウヘイ君がからかう。
「おばさんで悪かったね!(笑)」
と言うと、「そんなことは言ってないじゃんよぉ~」と言いながらコウヘイ君も肉や野菜をひとつの箱にまとめている。
2人を横目に、私と紗奈はカレー粉や寸胴鍋だけ持って炊事場へと向かった。
「とりあえず、何にしても材料をひたすら切らないとだね」
「うんうん。でも包丁は2つしかないね」
「面白そうだからあの2人にやらせるか(笑)」
紗奈はニヤリと笑って、私もそれに賛同するように頷いてまな板なんかの準備をした。
段ボールに入った肉や野菜を2人は軽々と持ってきて、どすんと木のテーブルに置く。
「俺ら何すればいいの?」
コウヘイ君の問いに、
「野菜を切るのだよ!」
と紗奈が答える。
男2人は驚いたように顔を見合わせ、声を合わせて「ムリムリムリ!!」と言う。
「大丈夫、私たち見てるから。やってみようよ(笑)」
私が言うと、2人はおずおずと持ち慣れない様子で包丁を手にする。
「じゃあ私ニンジンの皮むくから、コウヘイ君切ってね。教えるから」
段取り良く紗奈が言うと、コウヘイ君は「綾香ちゃんより怖いかも…」と言ってみんなを笑わせる。
「えっと、じゃあ瀬川くんは…たまねぎのココの部分を切り落としてくれる?そしたら私が皮むくから。剥いたらカットしていこう!」
こうしてそれぞれの役割が半ば強引に決まり、カレー作りが始まった。
慣れない手付きではあるが、瀬川くんは玉ねぎの根本を切り落としていく。
私はそれを剥いてはまたテーブルに戻す。
「じゃあ次は…---」
着々とこなしていく私たちとは裏腹に、紗奈たちはギャーギャーと盛り上がっている。
「そうじゃなくて、ここをこう切る!分かる?!あーあー!左手はこう!」
「ひぃ~怖いよぉ~」
「包丁持ってる時にふざけない(笑)」
「ふぁーい・・・」
たまねぎのカットが終わると、瀬川くんは目を真っ赤にしてまばたきをしながら私を見る。
笑いをこらえながら「おつかれさま」と言うと、「今笑っただろ(笑)」と言われ我慢できずに笑ってしまう。
「頑張ってくれたから、あとは私と紗奈で切ろっか」
「そうだね、2人はちょっと休憩でもしてな。これ切っちゃえばあとは鍋にぶっ込むだけだから~」
私がじゃがいもをカットしていく様子を、瀬川くんはずっと隣で見ていた。
そっと肩が触れ合っているほどの距離に、急に恥ずかしくなる。
「それ、なにしてんの?」
「芽を取ってるんだよ。毒があるらしいけど…正直よく知らないのに、なんかもう無意識に取っちゃう(笑)」
「へぇ~!お前ほんと料理好きなんだね」
「あ、そうそう、餃子おいしかったよ。瀬川くん、ニンニク強いの平気?」
「むしろそのほうが好きかも。くさいけど、ビールが最高にうまいよね」
「そうそう(笑)次はもっとニンニク入れよう…か…な…?」
夢中で瀬川くんとおしゃべりしているところを、紗奈とコウヘイくんがジッと見ている事に気付く。