転生王女と侍の国づくり「仮題」
訊かれた久遠は久しぶりに聞き覚えのある日本語を訊いて安堵した。言葉が通じる。それだけで久遠は警戒心を緩める。いうて久遠も12歳の少年である。貧しい奥州の片田舎の侍であった。
「俺は奥州の片田舎から源氏の義経様の呼応に参じた久遠と申す。此度は一ノ谷の合戦に参じたつもりであったがどうやら神隠しにでもあった模様。貴殿はお見受けするところ、この辺りでは身分が高いとお見受けする。しいては、どうか一ノ谷のまでの道のりを教えていただけないであろうか?」
 訊いてリゼは困惑した。奥州?奥州って鎌倉時代の前にあった東北地方の豪族だったかしら?うーん。歴史は余り得意じゃないんだよね。彼の言っていることが事実なら転生というよりは召喚者に近いのかしら。リゼはそんなことを思いつつも堅ぐるしいもの言いのほうが気になるのであった。
「その堅ぐるしいもの言いは何とかなりませんの?」
そう言われて久遠も困惑する。武士として精一杯の威厳を示すために使った言葉づかいであったがどうやら不況を買ってしまった。
「申し訳ない。俺は田舎出身故に父に武士らしく話すように言われており、不快を与えたのなら申し訳ない」
「……いいんだけどね。あなたが話しやすいならそれでも。ただね、あなたはどうやら神隠しにあったと言ってるけれど、正確に言うなら異世界に迷い込んだみたいね」
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