弱い僕だって、君の王子様になりたい
僕がセリフを口にして手を差し出すと、花恋ちゃんは「はい」と微笑んで僕の手を握る。

花恋ちゃんの頬は赤く染まってて、とても可愛い。だけど、何も言うことが出来ないんだ。

「……とりあえず、今日はここまでにしておこうかな。茜くん、本当に演技が上手だね!」

花恋ちゃんは、僕から手を離すとにこりと笑う。その笑顔は、太陽みたいに眩しいものだった。

「……っ!」

僕は、花恋ちゃんから目を逸らした。



花恋ちゃんと練習を始めて、1週間。登校中、どこからか声が聞こえてきた僕は、聞き覚えのある声に立ち止まった。

「止めてください!」

花恋ちゃんは、人気のない場所で不良に囲まれている。花恋ちゃんは、泣きそうな顔で不良たちを見つめていた。

「……」

花恋ちゃんを、助けたい……でも、怖いよ……僕は、どうしたら……。

恐怖で、僕の足は動かない。

――前にも言ったけど茜くん、本当に演技上手だね!本物の王子様みたい!

花恋ちゃんの言葉に、僕は背中を押されたような気がした。

……そうか。王子様を、演じれば良いんだ。これも、劇の演出だと考えれば……怖くない。

完全に僕のアドリブだけど……大丈夫。怖くない。

「……お前らは、まさか……敵国からのスパイか?」

僕の言葉に、不良たちは僕を睨む。
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