弱い僕だって、君の王子様になりたい
「……!」

僕の頬に、嫌な汗が伝った。足が震えるけど、それを堪えて不良を見つめた。

「……僕を裏切り、姫を誘拐するつもりだったんだな?」

僕の言葉に花恋ちゃんは何かを察したのか、「王子!来てはなりません!!」と声を出す。

「…………私と王子は、本来なら敵同士なのです……私は、無断でこの国に来ていました……捕まってしまうのも、当然の報いなのです」

「そんなことはありません!僕が、必ずや助け出してみせます!」

「……!!」

僕がそう言って不良に向かって走り出すと、花恋ちゃんは驚いた顔をした。

僕が突然演技を始めたことで未だに驚いている不良を横目に、花恋ちゃんの腕を引いて走り出す。

走っていると学校の近くに来ていて、僕は立ち止まった。

「……ここまで来たら、大丈夫かな。花恋ちゃん、大丈夫?」

「……茜くん……」

僕が花恋ちゃんを見つめると、花恋ちゃんは僕に抱きつくと泣き始める。

突然抱きつかれたことに驚いてしまって、僕は何も言えなくなってしまった。

「怖、かった……あ、ありがと……う。助けて、くれて……」

そう言って泣き崩れる花恋ちゃんの頭を、僕はそっと撫でた。
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