愛してしまったので離婚してください
「晶はあの日俺に、あえて病院の清掃部とかリネン室とか、調理室から先に案内してくれたんだってわかった時から俺は晶に惹かれてた。」

私たちはあの頃まだ今よりも距離があった。
かわした会話なんてほとんどなかった。

ただ、黙って病院の中を案内する。

でも、雅には私の伝えたい想いが届いていることがうれしかった。
あれから5年も経ったのに、今になって知る事実に私は心が温かくなる。

「確かに俺は外科医で、病院に関係している職員はたくさんいても、実際にやり取りをする相手はほんの一握りだ。それに、外科医としての腕が上がればあがるほど取り巻く環境は変わって、何人かの看護師や関係者に取り囲まれて、がんじがらめに守られている。そして、無条件に、なんて言うんだろうな。・・・自分が想う以上に、敬われてしまう。」
雅の言葉に嘘偽りがないというのはすぐにわかる。
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