愛してしまったので離婚してください
「その分いつだってプレッシャーと戦わないといけない。周りから求められる期待にこたえないとならないって思ったり、いつの間にか必要以上に抱えすぎてそのプレッシャーに手が震えそうになることもあった。まぁ、ニューヨークの病院でそれは一気に崩れたけどさ。」
ふっと笑う雅。でも言葉にするのは簡単でも、雅が環境の違いに感じたプレッシャーも不安も、その違いに慣れるための努力も、私が想像している以上のものだと思う。
「強引じゃなく、晶があの日病院を案内してくれた瞬間に、俺は思いだせたんだ。大切なこと。」
少し体を離して、私を見つめる雅。

その瞳に私がうつる。

「忘れそうになってた俺に思いださせてくれたんだ。大切なこと。手術をするだけだって、器具を作ってくれてる人。器具を滅菌してくれてる人。用意してくれた人、洗濯してくれている人。掃除してくれている人、患者を診てくれた内科医、担当の看護師・・・数えきれない。その人たちの想いも、努力も、いつの間にか忘れかけてた。」
「・・・」
私の頬に触れる雅の手はいつだって温かい。

この手に背負っているものの大きさを改めて知る。
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