愛してしまったので離婚してください
「私も思った。どうして私なのって。」
「うん」
「赤ちゃんができたってわかった時、すごくうれしかった。今までの人生の中で一番うれしかった。足が浮いてるみたいな感覚。そのくらい浮かれた。雅に伝えたらどんな顔をするのかなって、想像して少し不安だったけど・・・でも、想像するのは雅が赤ちゃんを優しく微笑みながら見つめる姿で、きっと大丈夫だって心のどこかで思ってた。」
雅はいつだって私の話を真剣に聞いてくれる。瞳をそらさず、私を見つめながら。

「でも、腫瘍があるってわかって・・・。本当はすぐに雅に助けを求めたかった。助けてって。夫としてだけじゃなく、医者である雅の努力を知っているからこそ、雅に助けてほしいってすがりたかった。」
「うん」
「だけど・・・できなかった。」
「それは俺のせいだ。ちゃんと」
「違う。」
雅は自分のせいだときっとたくさん自分を責めていたんだろう。
でも、それは違うことをわかってほしい。
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