愛してしまったので離婚してください
いつの間にか眠っていた私が次に目を覚ますと、そこにはベッドの隣にある小さなソファに腕を組み、体を小さくして目を閉じる雅がいた。

「・・・」
初めて見た寝顔。
その寝顔にも疲れが見える。

私はこの人と結婚したのだと初めて実感した瞬間でもあった。

同じ狭い病室の中に、私と雅の二人きり。
私につけられたモニターの機械音と彼の息遣いが聞こえる。

なぜか私は涙が溢れた。

きっと・・・私はいつの日からか雅に惹かれていたのだろうと思う。
そして、届かず前に進めないままの日々が過ぎていることに少なからず寂しさやむなしさを感じていたのだろうと思い知る。

手を伸ばせば届く場所にいる雅。
でも、この手を伸ばすことはできない。
そんなにも私たちはまだ距離が縮まったわけではないから。
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