愛してしまったので離婚してください
次の日、私の病室に来た両親はどこか気まずそうにしていた。

雅が病状と今後の治療方針を改めて説明してくれたものの、私もこれまでも両親とは多くを語ってこなかったからこそ、何を言えばいいかわからない。

「大丈夫なのか?」
気まずい沈黙が流れたあと、口を開いたのは父だった。
私の方を険しい表情で見つめたまま言う父に、視線を返して「はい・・・」と緊張しながら答える。

父がいるときは母はあまり多くを語らない。
亭主関白というよりは我が家は父は絶対的な権力を持っていて、母はいつも父の何歩も後ろを歩く。

「・・・・ごめんなさい・・」
病気になってごめんなさい。迷惑をかけてごめんなさい。
思わず私が謝ると、雅が私のベッドに近づき、私の手を握ってくれた。

「そばに居ながら体調の変化に気づけなかったのは僕の責任です。申し訳ありません。これからもたくさん協力いただくことがあるかと思います。お義父さんお義母さんの支えをいただかないと正直、難しいことも多いと思います。すみません。僕は全力で晶さんとお腹の子を守ります。医師としてすべてをかけて守る覚悟です。どうか、力を貸してください。」
私の手を握りながら、私の両親に向かって深く深く頭をさげる雅に思わず涙が溢れる。
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