愛してしまったので離婚してください
あの日の感覚を鮮明に思いだしながら、その唇がどう動くのかを私は見た。

「今夜は一緒に居させてくれないか?」

遠慮がちな言葉に、私はすぐに返事ができなかった。

離婚を切り出した私の言葉に、雅は反対するわけでも、それ以上質問をするわけでもなく、ただ遠慮がちな、自信のない表情のままそう言った。

最後の一夜ということだろうか・・・

この夜が明けたら、本当に私たちは別れるのだ・・・


結婚してから5年。
私たちを繋ぐ確かなものは何一つない。

この夜が明けたら・・・私たちは簡単に他人に戻ってしまう・・・
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