愛してしまったので離婚してください
「大丈夫だ。」
何度も何度も雅が私にかけてくれたおまじないの言葉。
父の言葉には、生きてきた分の、乗り越えて来た試練の分の重みがある。

その声が響くだけで、実は本当は泣きそうだった。

白衣を着たままの雅が私の手をギュッと握ってくれる。

少し涙で霞んだ視界の中で私を見て優しく微笑む雅に私は精一杯微笑んで返す。


生きてもう一度こうして雅に微笑みかけることができるだろうか。
もう一度・・・雅と・・・。


いつの間にかこんなにも愛してしまった雅。
両親の愛に気づかないまま進んできてしまった今までの人生。

まだまだやりたいことがいっぱいある。
まだまだ、いきたい。
< 215 / 251 >

この作品をシェア

pagetop